【ブランド解説】MSR(MountainSafetyResearch)【オススメアイテムもご紹介】

キャンプ
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MSR(MountainSafetyResearch)とは

1969年の創業当時のMSRロゴ。ラリーによる手書きらしい。

MSR(MountainSafetyResearch、以下”MSR”)は1969年にラリー・ペンバーシーという人物によって立ち上げられた。

その創設意思の源泉は、人々の「山での安全」に対する意識の向上を図ることを目的としており、それはブランド名の「Mountain Safety Research」からもよく分かる。

大きな特徴として、「より良い、より安全な、より信頼性の高いギアが、より大きな冒険を解き放つ鍵になる」という考えを強く持ち、今日に至るまで多くの製品が手作業によって製造されている。

MSRを語るうえでは「MOSS TENT(モステント)」というブランドと併せて語られることが多い。

MOSS TENTはその優れたデザイン性からニューヨーク近代美術館(MoMA)に”STAR GAZERⅡ”がキャンプ用品としては唯一永久展示され、さらにパリのルーブル美術館でもSILK製の”STAR GAZER”が展示されている。

STAR GAZER

1994年、このMOSSテントのデザインの着想を紆余曲折を経てMSRが買収したことにより、MSRのテント等はMOSSテントの優美なデザイン性を継承し、デザイン面でも非常に高い評価を得ている。

そんな優美なデザイン性と登山時の安全性を第一に考え、手作業を2024年の今日でも積極的に取り入れているブランド、それがMSRなのだ。

MSRの有名プロダクト

スノーシュー

ライトニングアッセント(公式HPより)

MSR立ち上げ当初から製品化されていたのがスノーシューだ。

50年以上経った今日でもスノーシューは一度も途切れることなく改良を重ねながらカタログに掲載され続けており、スノーシューと言えばMSRという程の抜群の知名度を持つプロダクトだ。

ガソリンストーブ

モデル9ストーブ

ガソリンストーブは1975年より製造されており、現在に至るまでMSRの営業利益の屋台骨を支え続けている。

1975年に発売された「モデル9ストーブ」はホワイトガソリンやストーブ、ランタン用燃料に加えて、灯油も使用できる次世代バーナーとして当時の登山者達に革命をもたらした。

1975年にリリースされたモデル9MFに続き、1977年に発売されたモデル9DFは、技術、燃焼効率が更に良くなり、バックカントリーでのパフォーマンスの向上をもたらし、現在では「ドラゴンフライ」や「ウィスパーライト」、「XGK EX」等のガソリンストーブをラインナップしており、ガソリンストーブと言えばMSR、というイメージを確固たるものにしている。

ドロメダリーバッグ

ドロメダリーバッグ

ウォーターストレージというジャンルは古くからあるが、MSRのドロメダリーバッグは他の製品と比べて非常に頑丈でありながら必要な容量をザックに入れて持ち運べる機能性を有している。

テント(特にイーストン社のサイクロンポールを採用したモデル)

ハバハバシールド

ここ数年より、MSRのテントポールはイーストン社のサイクロンポールが採用されている。

このサイクロンポールは航空機グレードの複合素材で作られたこのポールは弾力性が極めて高く、強風などの力が加わるとその強さに合わせて曲がり、元の形に戻る柔軟性が売りだ。

また、エクストリームシールドシステムを採用しており、従来の標準的なコーティングと比較して約3倍長持ちすると謳っている。

さらに、正確で耐水性が高い縫製によってシームテープをなくし、経年劣化によってシームテープが剥離するトラブルを解消すると同時に軽量化にも貢献しているというテントを製造しており、長く使えるテントを世に送りだしている。

一世代前のサイクロンポール採用テント、「マザハバNX」(管理人私物)

MSRの国内総代理店と修理保証体制

MSRの国内総代理店は株式会社モチヅキが担っている。

修理保証体制についてはNEMOと比べて更に手厚い体制を築いており、現状の修理保証体制としては世界中のアウトドアメーカーで見ても10本指には入るレベルだ。

また、ウェブサイト上で修理価格を明示しており、何かあった際でも安心して対応を依頼できる。

正規品でなくてもしっかりと修理自体は行ってくれる、というのも並行輸入品を購入する方からすると安心材料になるだろう。当然だが、正規品と比べるとやや高価ではある。

以下に2024年9月22日現在の価格表を記載しておく。

テント修理価格

内容正規品非正規品
ポール破損無償¥8,800~(1本交換)
フライ・本体破れ¥3,300~(1ヶ所)¥13,200~(1ヶ所)
点検・修理お見積もり料無償¥3,300

スノーシュー修理価格

内容正規品非正規品
フックリベット修理無償¥4,400~
点検・修理お見積もり料無償¥3,300

ストーブ修理価格

基本料修理基本料¥3,300]ST F’チューブO-リング(RD)
コントロールバルブO-リング(RD)
F’ポンプフューエルボトルシール
ポンプカップ
DF Adj Oリング×2(DFの場合)
オプションオーバーホール¥3,300チェックバルブ
ジェット
シェイカーニードル
ウィック
ポンプスクリーン

MSRの得意分野

MSRはゴリゴリの登山家向けのメーカーだ。

そのため、特に登山に利用するギアを中心とした製品群を販売している。

アウトドアの「衣食住」で言うと「食」と「住」に力を入れており、逆に「衣」に相当するようなウエア等は一切製造していない。良い意味で完全に割り切っているメーカーなのだ。

NEMOのような革新性というよりは質実剛健なギアの製造を意識しているようで、世に存在する既存プロダクトからの改良が非常に上手い。近年で言うと風の影響をほぼ受けなず、100%一次空気を使用して燃焼するラジエントバーナー機構を採用したウィンドバーナーパーソナルストーブシステム等も、競合のJETBOILを意識して更に発展的な改良を施したギア、と言えるだろう。

また、MSRの収納袋は全体的に余裕がある設計になっていることが多く、周辺パーツ等を含めて迅速な撤収を可能としている点もいかにも登山家向けのギミックだ。

キャンプというとMSRは少々持て余すレベルのギアではあるが、キャンプを行いながら将来的には登山もしたい、等といった考えをお持ちの方には非常に良い選択肢となり得る。

特にテント、タープのデザインについてはMOSS TENT譲りの優美なデザイン性を備えているため、キャンプ場でも山行中のテン場でも一目置かれることであろう。何よりも写真映えする。

管理人私物のマザハバNXと朝焼け

まとめ

MSRというブランドに一貫して言えることは「何よりも安全性を追求している」という点だ。

正規品であれば保証は非常に手厚く、しっかりとした修理をする。そもそも故障しないようにするためのメンテナンス方法等も細かく記載されたマニュアルが付属しているので、メンテナンスの勉強にもなる。

そんなMSRは「山を愛する人々がどうやったら安全に帰ってこれるか」ばかりを考えている変態メーカー、というのが管理人の個人的な認識だ。

この変態性はマス層には刺さらないことの方が多いだろう。

でもコアな製品を欲する人には自ずとMSRに辿り着いてしまう。

そんな変態登山者達(褒めている)のセーフティーネットがMSRなのだ。

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