ミステリーランチ(MYSTERY RANCH)とは

ミステリーランチ(Mystery Ranch)は、米国モンタナ州ボーズマンに本社を構えるバックパックメーカーで、その製品は耐久性、機能性、そして高品質なデザインで知られている。
創業者のデイナ・グリーソン(Dana Gleason)は、バックパック業界において長い経験を持ち、特にミリタリーやアウトドア市場で高い評価を受けてきた。
ミステリーランチの設立は2000年だが、そのルーツはさらに深く、グリーソンの過去のキャリアにさかのぼる必要がある。
そこで次章にてミステリーランチの歴史をご紹介しよう。
なお管理人はミステリーランチファン(通称、「ランチャー」)である。
ミステリーランチの歴史
デイナ・デザイン時代
ミステリーランチの歴史を語る上で、デイナ・グリーソンのキャリアを振り返ることは欠かせない。
グリーソンは1985年に「デイナ・デザイン(Dana Design)」というバックパックメーカーを創業した。
この会社は、彼の独創的な設計と優れたクラフトマンシップによって、アウトドア愛好者や登山家から高い評価を受け、特に「Terraplane(テラプレーン)」や「Bomb Pack(ボムパック)」などのモデルが有名だった。
未だにテラプレーンはミステリーランチブランドでも販売している。テラプレーンに熱心なランチャーが多いのはこのようにデイナ・デザイン時代から販売されている、という点もあるだろう。
デイナ・デザインは、バックパックの背負い心地や荷重分散について特に研究熱心であり、背中にかかる負担を軽減するために独自のフレーム設計を採用していた。
しかし、1995年、デイナ・デザインはキラースポーツ(K2 Corporation)に買収され、グリーソンは一時的に会社を手放すことになる。
これにより彼は一度業界から退くこととなるが、その後、新たなブランドを立ち上げるための準備を進めていった。
ミステリーランチの創業
2000年、グリーソンは再びバックパック業界に戻り、「ミステリーランチ」を設立した。
この新ブランドの目的は、デイナ・デザイン時代に培った技術をさらに進化させ、プロフェッショナルやアウトドア愛好者に向けた最高級のバックパックを提供すること、という目標を掲げた。
ミステリーランチは設立当初から、耐久性、機能性、そして使いやすさを追求し、特に過酷な環境での使用を想定した製品開発に注力してきて今日に至る。
ミリタリー市場への参入
ミステリーランチの創業が間もない頃、その名に注目を集めたのは、ミリタリー市場への進出だった。
2004年、アメリカ軍特殊部隊(SOCOM)向けに、ミステリーランチは特殊な要件を満たすバックパックを製造する契約を結ぶことになる。
この契約により、ミステリーランチは軍事向け製品の設計においても信頼を獲得し、その後、さまざまな軍用モデルが開発されていく。
特に「3 Day Assault Pack(3デイアサルトパック)」などは、耐久性と機能性で高く評価されており、今日に至る。軍事市場への参入に伴い、ミステリーランチは独自の「フューチュラヨークシステムを開発する。
このシステムは、ユーザーがバックパックを背負ったままでも簡単にフィット感を調整できるという特徴を持ち、過酷な環境での使用にも適していた。
この技術革新により、ミステリーランチは多くのプロフェッショナルから信頼を得ることとなり、ミリタリー市場において確固たる地位を築いた。
グリーソンが熱心に研究していた内容が世に認められた瞬間である。
消防、救急医療市場への拡大
ミステリーランチの製品は、ミリタリーだけでなく、消防や救急医療などの特殊な職業にも広がることになる。
消防士や救急隊員は、過酷な条件下で長時間作業を行うことが多いため、彼らにとっても信頼性の高いバックパックは欠かせないからだ。
そこでミステリーランチはこのニーズに応えるため、消火活動用のバックパックや、メディカルキットを持ち運ぶための特殊なパックを開発した。
特に、消防士向けの「Hotshot(ホットショット)」シリーズは、火災現場での過酷な状況に耐える設計が施されており、高い評価を受けている。
また、救急医療向けの「Medical Assault Pack(メディカルアサルトパック)」などは、医療機器を効率的に収納し、迅速に取り出せる構造が特徴だ。
これにより、ミステリーランチは消防や救急医療のプロフェッショナルにも欠かせないブランドとなった。
アウトドア市場への回帰
ミリタリーやプロフェッショナル市場での成功を収めた後、ミステリーランチは再びアウトドア市場にも焦点を当て始める。
グリーソン自身もアウトドア愛好者であり、製品開発においては常に「プロフェッショナルレベルの品質を一般ユーザーにも提供する」というビジョンを持っていた。
このため、ミステリーランチのアウトドア製品は、登山やキャンプなど、一般的なアウトドアアクティビティにも適したものが多くなっている。
ミステリーランチのアウトドア製品は、非常に耐久性が高く、長期間にわたる使用に耐える設計が特徴だ。
また、荷物の取り出しやすさや背負い心地など、使い勝手にも重点が置かれており、プロフェッショナルな品質を維持しながらも、一般ユーザーが使いやすいデザインが施されている。
現在と未来
現在、ミステリーランチはミリタリー、消防、救急医療、アウトドア市場において確固たる地位を築いている。
非常に強力な製品群を有するミステリーランチは2020年にアメリカの「グローブ・トロッター」(Globe-Traveler)によって買収された。
ミステリーランチファンの中では「グリーソン、また買収か」といった感覚だろうか。
しかしながら今のところは良好な関係であるようで、グリーソンが引退するといった話は出ていないようだ(もっとも、グリーソンも高齢なので引退するとなるとおそらくミステリーランチが最後のブランドとなるだろう)。
買収後も、ミステリーランチは引き続き独自のブランドとして運営されており、製品の設計や品質はこれまで通り維持されている。
この買収によってブランドの方向性が大きく変わることはなく、品質にこだわるブランドのイメージや設計思想は引き続き継承されている。
さらに、ミステリーランチは環境への配慮も重視しており、持続可能な素材の使用や製造プロセスの改善にも取り組んでいる。近年ではリサイクル素材の採用もその成果だ。
今後も、ミステリーランチは革新的な製品を生み出し続けると期待されており、バックパック業界においてさらなる成長を遂げると考えられる。
グリーソンのビジョンは「機能性と耐久性を最優先に、ユーザーのニーズに応える製品を作る」というシンプルなものだが、そのシンプルさこそが、ミステリーランチの製品に対する信頼を築き上げる要因となっているのだ。
ミステリーランチの特徴
前章にて記した通り、ミステリーランチの特徴を簡単にまとめると以下の通りだ。
- 荷重分散、フレーム設計からもたらされる優れた背負い心地
- 圧倒的な堅牢性
- プロユースに特化した製品開発
荷重分散、フレーム設計からもたらされる優れた背負い心地
ミステリーランチの素晴らしい点として、多くの製品に採用されている「フューチュラヨークシステム」が挙げられる。
このフューチュラヨークシステムとは、ザック背面に搭載されており、背面長の無段階調節が可能な仕組みのことを指す。
背面長の無段階調節ができるため、しっかりと調節すれば個人の体格に合わせてザックを適切なバランスで背負うことができる。
フューチュラヨークシステムについては、以下の動画をご確認いただきたい。
また、このフューチュラヨーク自体がザックの構造体としての機能を併せて持っており、大荷重であっても快適な背負心地を提供してくれる。
ミステリーランチはザック単体の重量が他の製品と比べるとかなり重いのだが、その重さを感じることなく背負うことができ、大荷重であってもその背負い心地が変わることがない。むしろ他のザックよりも軽く感じることがあるから驚きだ。
一方、このフューチュラヨークシステムは不要、という者も多くいるのは事実だ。そのような方のご意見としては「そもそも最適な背面長を選択できれば、このフューチュラヨークシステム自体が不要」というようなものだ。
たしかにそれも一理あるのだが、背面長をいくつか選べる他のザックであっても、その選択できるピッチはだいたい1cm前後でしか選択できなかったりする。1cm単位で調整ができれば十分だと思われるかもしれないが、圧倒的な重量を担ぎ上げることが可能なミステリーランチ系のザックではこの1cm未満での調整幅、つまり無段階調整が大変大切なのだ。
ちなみに管理人が山行する場合、だいたい17kg前後の重量になるのだが、往路ではやや背面長を短めにして担ぎ、復路ではジャストサイズで担いでいる。往路と復路で荷物量が違うため、このように細かく調整できるのは非常にありがたい。
圧倒的な堅牢性
さすが米軍に使われているだけのことはある、と言えるだろう。
基本的にほとんどのミステリーランチのザックは底部が二重化されており、表地(つまり地面に接する生地)が裏地(つまりザック内部の生地)よりも若干大きく作られている。
こうすることによって、ザック全体の荷重がザック底部の生地に直接伝わることを緩和させ、損傷しやすい底部の保護を実現している。
また、ザックに利用される生地自体もコーデュラ500等の非常に頑丈な生地が使われている製品が多く、その点もミステリーランチ製品の堅牢性を盤石のものにしている。
プロユースに特化した製品開発
ミステリーランチは登山用ザックとしては重量もあるし不適切と考える方もいるのは仕方のないことではある。
なぜなら他の登山用ザックと比べても圧倒的に重量があるからだ。
しかし、そのプロユースに特化した製品開発を行う中で培われた技術力は他の登山用ザックのみを販売しているザックメーカーを凌ぐ。
「登山をしたいから登山用ザックを買う。だからミステリーランチは不要だ」と思われるかもしれないが、一般的な登山用ザックは軽量化のために生地が薄かったりするものだ。結果的にザックの生地が裂けて装備品一式がザックに収納できなくなる、なんてことも有り得る。
そのようなことはごく僅かな確率であり、その確率のためだけに他の登山用ザックよりも1kg程度重いミステリーランチ製品を選ぶのは馬鹿らしいと考える方がおられることを否定はしない。
しかし、とにかく頑丈であるというのは圧倒的な安心感を提供してくれるのも事実なのだ。
管理人は多くのミステリーランチ製品を所有しているが、日常生活から通勤、登山に渓流釣り等ありとあらゆる場所でミステリーランチ製品を使っているが壊れたことは一度も無い。
(以前利用していたドイターは2回程壊れたことがある)
とにかく頑丈。だからこそ、その道のプロ達にも選ばれているわけである。
ミステリーランチは一生物なのだ。
ミステリーランチのおすすめアイテム
HIP MONKEY2
管理人激推しアイテムその①。
ミステリーランチを初めてご購入されるなら、ザック系も良いのだがもっと日常生活でも使いやすい本品をおすすめしたい。
ちなみにそこそこ細かくレビューもしているので、詳細については以下よりご確認いただきたい。
2 DAY ASSAULT
管理人激推しアイテムその②
同じ系統に「3 DAY ASSAULT」という特殊部隊向けの製品があり、それのダウンスケール版だ。
2 DAY ASSAULTとは、その名前の通り「2日間の行動で必要な装備品を詰め込める」ということであり、事実相当な量のアイテムを入れることができる。
管理人は通勤とデイハイクにこの2 DAY ASSAULTを利用している。非常にオススメだ。何より他のアサルトシリーズより安い(ただしMade in USAではない)。
詳細は以下をご確認いただきたい。
おすすめは容量的な問題からこの2 DAY ASSAULTではあるが、この「デイアサルトシリーズ」は以下のラインナップを展開している。
- 3 DAY ASSAULT
- 2 DAY ASSAULT←一番オススメ
- 1 DAY ASSAULT
以下の動画でもわかりやすく解説されているので、ご確認いただきたい。
CATALYSTシリーズ
「URBAN ASSAULT(アーバンアサルト)」という製品の後継がこちらの「CATALYST(カタリスト)」シリーズだ。
管理人は2 DAY ASSAULTを購入するまではアーバンアサルトを使っていたが、非常に使い勝手が良く、サイズ的にもコンパクトで通勤通学というシーンだけで考えるとこちらのカタリストシリーズの方がオススメだ。
カタリストシリーズは容量別に以下の3ラインナップを展開している。
- CATALYST26
- CATALYST22
- CATALYST18
個人的にはCATALYST22が一番オススメだ。
CATALYST26になるとザックの横からPCスリーブに直接アクセスができたり、気室内に各種オーガナイザーポケットが付いたりするが、CATALYST26を購入するくらいであれば絶対に2 DAY ASSAULTを購入した方が良い(オーガナイザーポケットは結局使わないことの方が多いし、容量的・価格的にも2 DAY ASSAULTとほぼ変わらなくなるため)。
CATALYST18はスタイリッシュなサイズ感なので、満員電車に乗るような通勤通学のシーンであっても抵抗なく利用できるだろう。
容量的には18リットルということでカタリストシリーズの中では最も少ないモデルだが、普段からあまり荷物を持たない方であれば十分余裕があるはずだ(管理人は通勤時でもファーストエイドキットやEDCを持ち歩いているため、CATALYST18は容量的に厳しい)。
ファーストエイドキットやEDCについて詳しくは以下の記事もご確認いただきたい。




VOID BAGシリーズ
管理人激推しアイテムその③
「ZOID BAG(ゾイドバッグ)」という製品の後継がこちらの「VOID BAG(ボイドバッグ)」シリーズだ。


このボイドバッグシリーズは画像の通りただの袋だ。笑
袋をオススメするというのも馬鹿げていると思われるかもしれないが、ゾイドバッグシリーズから継承されているこの台形の形状、長辺側のちょうど良い位置にファスナーを搭載、ボイドバッグシリーズから両側に搭載されたグラブループといった細かいギミックが「ただの袋」から「ボイドバッグ」という名を冠するにふさわしい存在にまで昇華されている。


このボイドバッグシリーズは以下の3ラインナップを展開している。
- VOID BAG S
- VOID BAG M
- VOID BAG L
このボイドバッグは各サイズとも非常に安く、手軽にミステリーランチという製品の哲学に触れられるという点でもオススメだ。
前作のゾイドバッグシリーズも含めると管理人は相当数を保有しているが、基本的にいくつあっても困らないのがこのボイドバッグシリーズだ。


素材は210デニール ヒトラナイロン(リサイクルファブリック使用/PFAS-free DWR)で、現在は各サイズ6色展開だ。


BOOTY BAG LARGE
ミステリーランチの製品の中でも名品だと管理人は思っているアイテム。
このバッグは、「手持ちバッグがリュックになった」、「ものすごく大きなポケット」とも形容できるような存在だ。
管理人的には現行のX-Pacではなくコーデュラのものの方がオススメなのだが、現行ではカタログから消失してしまった。
管理人が所有する10年物のブーティバッグについてのレビュー記事は以下で紹介している。
とは言えブーティーバッグとしては十分な用をなすのは間違いない。このバッグの使い方だが、買い物バッグとして使うのがオススメだ。
スーパーに行く際にマイバッグを持つのはもはや普通のことだと思うが、そのマイバッグを遥かに強靭にさせて破れることなどほぼ皆無、マイバッグに詰めて手が痛くなる時にはリュックスタイルで背負う、とんなことができるスーパーな買い物バッグなのだ。


ミステリーランチの国内総代理店と修理保証体制
ミステリーランチの国内総代理店はA&F(エイアンドエフ、通称「えーえふ」)だ。
エイアンドエフはアウトドア業界に身を置くものであれば誰でも知ってるレベルのマンモス企業だ。
我が国のアウトドア産業の創出から発展までの全ての過程をほぼエイアンドエフが担って来たと言っても差し支えないレベルだ。
そんなエイアンドエフが代理店として立ち、そもそもの製造元がザックの製造に人生を捧げてしまった変態ミステリーランチということでアフターフォローもバッチリだ。
国内正規品に限った話で言うと、後から製品の欠陥が反面した場合でも無償交換や無償修理を行ってくれる。
当然製品欠陥ではなく使用者の瑕疵があった場合でも有償修理をしてくれる。
そんなミステリーランチだが、そもそも壊れることがほぼ無いのであまり修理をすることは無かったりする。
ミステリーランチ製品は壊れたら自慢して良い。それくらい普通に使っていて壊れない。
まとめ
ミステリーランチというブランドの歴史やおすすめの製品についてかなりディープにご紹介してみた。
ランチャーとしてのアツい想いを吐露してみたが、実はまだまだ書き足りていないことがいっぱいあるので、今後第2弾の記事も作成していこうと思う。
ミステリーランチは本当に良いプロダクトが多いので、是非一度買ってみていただきたい。