ナイフの研ぎ方について

キャンプ
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以前、「キャンプにナイフは必要?アウトドア店員が回答します」というタイトルでブログ記事を公開したところ、かなりの反響をいただいた。

そのブログ文中でも触れているが、ナイフの有用性というのは、キャンプにおいてはそこまで高いものではない。

それでもナイフが欲しい!という方はバトニング等の他の用途を兼ねたり、ロマン的に所有したいという方が多いのではないだろうか?

バトニングやロマン的な要素であれば、研ぎはあまり必要はない。バトニングというのは、基本的にそこまでナイフの切れ味は必要なく、どちらかといえばナイフに利用されている鋼材自体の靭性が重要だ。ロマンに関しては言わずもがな、だ。

管理人の場合、上記のブログ記事で「包丁代わりであればナイフは不要」と言っておきながら包丁代わりに使っている。笑

理由はもちろん、アウトドア業界に長く身を置くものとしては当然ナイフの使い勝手も熟知する必要があるからだ。

ナイフを研ぐ際に必要なもの

ナイフを研ぐ際に必要なものは以下だ。

アイテム必須度(星5評価)
トロ舟★★★★(場合によっては必須)
砥石(荒砥石)★★★★(場合によっては必須)
砥石(中砥石)★★★★★(必須)
砥石(仕上げ砥石)★★★★(場合によっては必須)
砥石台★★★★★(必須)
レザーストロップ(革砥)★★★(あると有益)
コンパウド★★★(あると有益)
タオル(汚れて良いもの)★★★★★(必須)

トロ舟

トロ舟というものをご存知だろうか。

コンクリや三和土を作る際などに利用しているアレだ。

何故これを管理人は場合によっては必須と言っているかだが、ナイフを研ぐ際にはその鋼材のHRCによっても異なるが、ある程度の時間を掛けてじっくりと研ぐ必要がある。

そのような際、例えばキッチンや洗面所で研ぐとどうだろうか?ご家庭の環境やご自身の体調によっては以下のような状況になることが容易に想定できる。

  • 奥様やご家族から「邪魔」と言われる(結果的に研ぎが中途半端になる)
  • 中腰に近い姿勢になって腰が痛くなる(結果的に研ぎが中途半端になる)

つまり研ぎ場所次第というのもあるが、研ぎが中途半端になる可能性が高いのだ。トロ舟があれば上記のようなシーンを完全回避可能だ。

トロ舟があれば、テレビを観ながらじっくり研ぎを行うこともできる。

なお、トロ舟についてはある程度の大きさが必要だ。理由はそうしないと研いでいる際のナイフや腕がトロ舟の内壁が邪魔してスムーズな研ぎができないためだ。

最低でも以下くらいのサイズを推奨したい。

管理人の場合、他の用途も兼ねているため、カインズで購入したガーデニングトレーを利用している。

簡単に言えば「大きめの箱」を用意すれば何でも良い。

このようなガーデニング用のトレーでも良い

砥石(荒砥石、中砥石、仕上砥石)

研ぎを行うわけなので、当然砥石が必要だ。

その中でも特に重要なのは中砥石だ。正直中砥石だけあればそれで構わないレベルだ。だいたい1000~2000番手くらいのものが中砥石と言われる。

荒砥石はナイフのエッジ角度やベベルの調整をする際、ナイフ全体に錆が出た際等に使う。だいたい300~1000番手程度のものが荒砥石と言われる。

仕上砥石は中砥石である程度研ぎが終わったら利用するものであり、だいたい3000~30000番手程度のものが仕上砥石と言われる。今回は仕上砥石は使わずにレザーストロップ(後述)で代用するため、仕上砥石はない(割れてしまって使用不能になった…)。

砥石には「天然砥石」と「セラミック砥石」の2種類と「海外製」、「国産」という生産国の違いがある。

管理人は海外製のものでも積極的に利用するが、確実に生産国は国産がオススメだ。そもそもナイフを研ぐという概念自体、日本刀製造から培われた圧倒的なノウハウが存在すると思っている。

それと海外製の砥石は番手が相当あいまいである。国産と海外製で同じ番手で比べると絶対に同じ番手で無いことは使ってみたらすぐに分かるレベル。

天然砥石かセラミック砥石かは好みで良い。ただし天然砥石はご想像の通り非常に高いものが多いため、管理人はセラミック砥石を利用することが多い。

ということで管理人のスタイルは「セラミック砥石」かつ「国産」ということで以下を利用している。

シャプトン株式会社の「刃の黒幕」シリーズ

なかなか独特なネーミングセンスな気がするのだが、モノとしては非常に良い。

刃の黒幕シリーズは、1983年に創業された「シャプトン株式会社」という栃木県の企業が製造・販売しているシリーズだ。

今回は錆が酷いナイフを研ぐため、荒砥石としての320番手、そこからの簡易的な刃付けのし直しとして1000番手、2000番手を利用する作戦だ。

ちなみに管理人が所有していて今回割ってしまったのは以下の仕上砥石だ。

そう、2個の仕上砥石を割ってしまったのだ。。。(泣

砥石台

シャプトンの刃の黒幕シリーズであれば、砥石ケース自体が砥石台にもなる作りなので、砥石台は不要だ。

ただし、しっかりとした研ぎに拘っていくのであれば砥石台は必須。簡易的なものは滑ったりもするため、純粋に危険だったりもする。

砥石台は重量がしっかりとあって、砥石をしっかりと挟めて、台座部分はゴム製の物が良い。

管理人は以下のものを使っている。

正直これ以外の砥石台はオススメしないレベルでオススメ。

レザーストロップ

「レザーストロッピング」という単語をご存知だろうか。

ここはここで奥深い世界になってしまうので今回は割愛するが、「革で研ぐ」ということだ。研ぐ時には砥石の他にもこのような革砥や新聞紙等でも研げたりするのだ。

これまで皮砥は自身でDIYしたものを使っていたのだが、アマゾンで探してみたらとてもお安くあったので試しに使って以降、簡単な研ぎなら十分実用的であったので以下を激推ししている。

管理人的には少し小さいサイズ感ではあるが、革室や革の固定具合と値段的な安さが非常に高次元にまとまっている

コンパウンド

コンパウドは皮砥に付けて利用する。コンパウドには色々な種類があるが、現在は上記の皮砥に付属されていたコンパウドを利用している。

白い方が研磨力がある白棒、緑色の方が仕上用の青棒だ(白棒・青棒は研ぎ界隈では一般用語だ)。

モノタロウさんのサイトに非常によくまとまっていたので転載させていただく。

白棒と青棒

皮砥購入時のセット品として付属していた白棒と青棒だが、使った感じは白棒が3000番程度、白棒が7000前後くらいの粒度だと思われる。

実際に研ぐ

ナイフを30本近く持っているため、たまに使おうと思った際にはだめになっているものがあるのは仕方ないことだ。

だが今回、管理人自身がびっくりするくらい錆びており、「これは絶対にブログのネタになる!」という確信と、ここまでナイフを錆びさせてしまったことの恥を偲んで今回の記事化が実現した。

それではドン引きレベルで錆びてしまったナイフをご覧いただこう。

ワーオ
ワーオ

ワーオ

驚いた。そしてここまでなっても全然研げれば問題ないことをお伝えできればと思っている。

【作業1】砥石を軽く浸水させる

軽く浸水させる

刃の黒幕シリーズの場合、基本的に浸水は不要なのだが、長年のクセでつい浸水させてしまう。

シャプトンの刃の黒幕シリーズの場合、セラミックなので長時間の浸水は砥石の軟化を招く恐れがある。

そのため自己責任でお願いしたい。

ただし管理人の経験上、刃の黒幕シリーズ以外の砥石含めて基本的に浸水させて悪い状態になったことはない。浸水しないで使って悪い状態になったことのほうがあるイメージだ。

【作業2】砥石台に砥石を固定させる

先ほどご紹介した砥石台に砥石をセットする。

刃の黒幕#1000をセット

刃の黒幕の場合、片面にはロゴ印刷がされている。ロゴ印刷されている面を利用しても問題ない(表裏どちらも利用可)。

ただし、一般的にはロゴ印刷されていない面を最初に利用するのがオススメだ(メーカー推奨の使い方でもある)。

【作業3】砥石で研ぐ

いよいよ研ぎを開始する。

研ぐ際のコツについてはそれだけでかなり長くなるので、別記事にてご紹介をさせていただく予定だ。

そのためここでは簡単に記載するに留めさせていただきたい。

研ぐ際のポイント① 研ぐ際の角度

よく言われる話は「10円玉が2枚入るくらい傾ける(15°前後)」だ。ただし、実際にはセカンダリベベルのエッジ角度によっても異なるので、全てのナイフがその角度とは言い難い(ここらへんがナイフの研ぎの難しいところだ)。

「10円玉が2枚入るくらい傾ける(15°前後)」のは、片刃の和包丁ではジャストサイズだ。昭和の時代では家庭で包丁を研ぐのは普通のことだったので、その時代の目安が今でも聞かれる理由だ。

ナイフは両刃のものが多いため、エッジアングル角度は和包丁よりも高めが多く、30°前後のものが多い。

そのため、10円玉2枚分程度の傾け方だとエッジ自体を研ぐというよりはセカンダリベベルのショルダー部分を研ぐことになり、結果的に「研いだのに切れ味が変わらない」と感じる方が多い。

切れ味に直結するエッジを研いでいるわけではなおので、構造がわかれば当たり前の話である。

先にも述べたとおり、このエッジアングル角度をしっかりと把握することがナイフの研ぎでは重要になる。

エッジアングル角度が分からない場合は以下の目安でやってみると良い。

食材を切る用途の場合・・・エッジアングル角度15°〜30°(両刃の場合。片刃なら7.5°〜15°)

バトニングを行えるようのフルタングナイフの場合・・・エッジアングル角度25°〜45°(両刃の場合。片刃なら12.5°〜22.5°)

オピネルの場合なら15°。つまり10円玉2枚程度でOKだ

少々難しい話をしてしまった。

ナイフの構造(エイペックス、ベベル、エッジ、グラインド)等を理解しないとガチな研ぎは難しいため、次回はそのようなこともご説明しようと思っている。乞うご期待。

研ぐ際のポイント② 分割研ぎと力の入れ方

分割研ぎというワードが一般的かどうかは分からない。(笑)

ただ、砥石の幅に対してナイフの刃長の方が長いというのは普通のことだ。

結果的に「ナイフの刃全体をまとめて研ぐ」ことは出来ないし、そもそもそういう研ぎ方はしない。

つまり分割研ぎとは「ナイフの研ぎ面を複数セクションに分けて研ぐ」ということだ。

管理人の場合は3分割でやっている。ナイフの長さ如何に関わらず3分割だ。

この画像では左薬指、中指、人差指の箇所を研いでいる。

研ぐ際には研ぎ面の刃と砥石の両方を触れるようにしながら研ぐ。

そのため、上の画像のような研ぎをする場合は上(奥)から下(手前)に力を入れて研ぐ(下から上に力をいれると指が切れる恐れがあるので危険)。

なお、研ぐ際の力の入れ方には「奥から手前」、「手前から奥」の異なる宗派が存在する(笑)

管理人は正直どっちでも構わない派だ。安全にしっかり研げることが最重要だ。

両刃で研ぐ際、利き手でナイフをしっかり保持して研ぐ。結果的に両刃の場合は刃が奥側、手前側に向くことになる。

そのため管理人は以下のような力の入れ方をする。

刃が奥側の場合・・・奥から手前に持っていく際に力を入れる

刃が手前側の場合・・・手前から奥に持っていく際に力を入れる

この時は奥から手前にかけて力を入れる

研ぐ際のポイント③ 研泥(研クソ)の扱い

研泥の成分は水、削れた砥石、削れたナイフの鋼材だ。

管理人の場合は荒砥石、中砥石の場合は気付いたら流す。仕上砥石の場合は流さず研ぐ場合が多い。

研泥はコンパウンド的な作用もあるわけだが、荒砥石と中砥石での研ぎの場合は砥石自体の研磨力の方が研泥の粒度よりもはるかに荒いため、コンパウンドとして利用できるとは考えにくい。

逆に仕上砥石であれば、砥石の粒度と砥泥の粒度がある程度同じレベル感だと思われるために残しながら研ぐことが多い。

ただ、正直あまり気にしないレベルではある。

「研泥は残す」という記事や説明もよく見るが、それは砥石と鋼材の兼ね合いな気がする。管理人も白紙2号の和包丁ならそうする。

これくらいの砥泥ならそのまま研ぐ。神経質にならなくて良い

【作業4】皮砥で研ぐ

レザーストロップに白棒と青棒(コンパウンド)を塗り込み、撫でるようなイメージでカエシを無くす。

レザーストロップの際にはナイフの角度は細かく変える

砥石で研ぐ際には同じ角度で固定して研いでいたが、レザーストロップで研ぐ際には角度を細かく変えるイメージだ。

研ぎ終わりの結果

それではご覧ください。

とりあえず使えれば、程度で研いだので綺麗に研いではいない
サビは消えているのがお分かり頂けるだろう

如何だろうか?

同じオピネルNo12だが、Befor/Afterを見比べていただきたい。

ここまで研げれば管理人的には十分だ。

紙も余裕

今回、見事な復活劇を研げたこのナイフは以下だ。

ついでにHRC60程度(研ぎにくい)ナイフも研いでみた

管理人のメインナイフ、ベンチメイドのブッシュクラフター165(HRC61)も簡単に研いでおく。

研ぐというよりは汚れを落とすくらいの感覚

研ぎ終わりは以下だ。

これくらいでok

なお、このブッシュクラフター165に利用されるCPM-S30Vというこの鋼材は研ぎづらさが半端ないため、ガチで研ごうとすると1時間以上かかる。

今回は軽く(といっても20分くらい)だ。

まとめ

今回は「研いでみた」的な記事に留めてみた。

ナイフを研ぐ際にはナイフの構造の理解が必須になるため、次回はナイフの構造と、より細かな研ぎのコツをお届けしようと思う。

乞うご期待!

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