ナイフを作る時には鉄が必要です。この鉄のことを”鋼材”と言うのですが、鋼材の種類が非常に多いです。そして、鋼材毎にナイフとしての性格が違います。
この記事では、そんなナイフに使われる鋼材の比較軸として非常に有名な要素を3つご紹介します。
ナイフの鋼材3要素
- 硬度
- 靭性
- 強度
・・・の3つです。
本当は他にも「加工性」や「耐食性」等もあるのですが、分かりやすく3つとしました。
加工性はナイフの使用者である我々一般人にはさほど関係ないですし、耐食性については鋼材のジャンルで明確な違いがあるので、わざわざ気合を入れて覚える必要はありません。
ということで、ここからは「ナイフの鋼材3要素」の中身について見ていきましょう!
硬度
「硬度」という漢字は読んで字の如く「硬さ」です。
ナイフで言う硬さとは、「切れ味」のことだと思っていただいて大丈夫です。

「硬度=切れ味」ってのはちょっと強引なんですけどね…
少しだけ補足しますと、ナイフ界隈で硬度を測定する時にはよく「ロックウェル硬さ」という指標が使われます。
このロックウェル硬さを表す単位として「HRC」というものがあり、このHRCがナイフの切れ味を示す指標として使われているのが現状です。
HRCが高ければ高いほど切れ味は良いです。例えば有名どこの鋼材のHRCは以下の通りです。
| 鋼材名 | HRC |
|---|---|
| 420HC | 58 |
| CPM-S30V | 58~60 |
| A2 | 57~62 |
| 12C27 | 54~61 |
硬ければ硬い程、刃は相手に食い込みやすくなり、切れ味は増します。
しかし硬いほど後述の靭性は下がり、ちょっとしたことで折れるか、刃こぼれします。
後日改めてご紹介しますが、高炭素刃物鋼の一般的な硬度はHRC52から58程度と言われており、ステンレス刃物鋼の一般的な硬度はHRC56から60程度と言われています。
HRC52未満の硬度は刃物としては柔らかいとされており、HRC60以上の硬度は刃物として、大変硬くもろいと考えられています。
あ、あとHRCは100点満点ではなく、70点満点だと思ってください。このHRCを1上げるのは非常に大変なことなんです。なので、現実的にナイフとして利用されている中で最もHRCが高いものでも66程度だと思います。
基本的にはHRCが60を超えてくると「このナイフめっちゃ切れ味良いね!」ってレベルになってきます。
参考までにアウトドア店員のくぼやんが思う「HRC毎に思う感想」をご紹介します!!
| HRC | くぼやんの感想 |
|---|---|
| 52未満 | 論外(園芸用スコップ代わりにはなりそう) |
| 52~56 | 砥ぎの勉強には使えるかな?雑な用途に使うなら十分 |
| 56~58 | 普通のナイフ |
| 58~59 | ちょっと良いナイフ |
| 60 | かなり良いナイフ! |
| 61 | 切れ味に特化したナイフ!切れ味こそ漢の浪漫! |
| 62 | 切れ味最高!他の要素なんて気にしない!! |
| 63 | 切れすぎて怖い… |
| 63~70 | ここまで切れ味に拘るなら、他に拘るところがあったのでは… |
・・・以上、茶番でした。笑
これは実際にナイフを40本ほど所有して思ったことですが、HRCは高ければ高いほど良い、というわけではありません。くぼやんがお客様と接客する際に最初に購入するナイフとしておすすめする物はだいたいHRC57~59程度です。
靭性
靭性(じんせい)という要素も非常に重要です。簡単に言ってしまうと「金属の粘り」のことです。
靭性が高いと、強い衝撃を受けた際に刃こぼれをせずに済みます。一般的にはよく「硬度が高くなるにつれ、靭性は低くなる」と言われます。靭性の対義語として、今回紹介する3要素以外の概念になってしまいますが、「脆性(ぜいせい)」という概念もあります。
よく切れるナイフ(硬度が高いナイフ)であればあるほど、顕微鏡レベルでナイフのエッジを確認してみると刃こぼれをしていることがよくあります。これは靭性が低いから顕微鏡レベルで刃こぼれをしているわけですね。
したがって、最初のうちは靭性については「刃こぼれのしにくさ」と覚えて頂ければ良いのかなぁ、と思います。
なお、もう一度お伝えしておきますが、硬度が高くなるにつれ、靭性は低くなります。この原則は大変重要です。硬いものほど衝撃を受けた際にはもろくなる傾向があり、例えばガラスはその典型です。ガラスは硬くて脆いことから、硬脆材料(こうぜいざいりょう)と呼ばれることもあります。
硬度と靭性は基本的には相容れない関係であるため、利用シーンに応じて切れ味(硬度)を取るか、刃こぼれのしにくさ(靭性)を取るかを検討すべきです。
強度
ナイフの鋼材3要素の最後は「強度」です。強度とは「変形に対する抵抗力」です。
例えばナイフを万力等に固定して、そのナイフのブレード部分に少しずつ荷重をかけていく場合をイメージしてください。
この場合、荷重をかければかける程、ナイフは曲がると思います。この”曲がり始める荷重”が強度を意味します。
強度が高ければ高いほど「ナイフの形状を保てる」ということになりますので、例えば太い薪を叩き割るバトニングには強度の高いナイフを使うと良いです。
強度は硬度、靭性の両方と共存可能です。そのため、「硬度と強度が高いナイフ」、「靭性と強度が高いナイフ」というのは比較的よくあります。
まとめ
いかがでしたか?アウトドアナイフに求められる3要素について解説しました。
この他にも耐蝕性(たいしょくせい)、加工性等の概念もありますが、まずは上記の3要素を覚えていただけると、ナイフ選びそのものが非常に楽しくなりますよ!
ナイフに使われる各種鋼材については以下のページで詳細にまとめているので、ご興味があればぜひご確認ください!


