アウトドアナイフによく使われる主要な鋼材のジャンル4種類と、各ジャンルのうち有名な鋼材の特徴・代表的な鋼材名の一覧ページです。
随時加筆していきますので、ご参考になれば幸いですm(_ _)m
炭素鋼(Carbon Steel)
基本的に炭素鋼は鉄と少量の炭素で作られています。
炭素鋼は含まれる炭素量で、低炭素鋼、中炭素鉄鋼、高炭素鋼、及び非常に高い炭素鋼の4つに分類されます。
主な鋼材
A-2(AISI A2)
- バークリバーによく使われている鋼材です。もちろんアメリカ産!
- 元々ナイフの鋼材というよりは工具等に使われることを想定した鋼材です。
- バークリバーで採用される炭素鋼のうち、最もスタンダードなものです。特に靭性と硬度が良いバランスであり、優れた刃持ちを発揮。
- バークリバーが採用する鋼材の中では最も研ぎやすく、価格が比較的安価なのも魅力です。
- やや錆びやすいという欠点を持ちますが、研ぎやすさも相まってきちんと手入れができる方であればメリットの方が目立つ鋼材。
- 詳細についてはメーカーの資料をご確認ください。(英語)
XC90
- オピネルのカーボンモデルに使われている鋼材です。フランス産。
- 切れ味は抜群ですが、錆びることで有名なモーラナイフの炭素鋼よりも良く錆びます…(耐食性が低い)
C100
- オピネルのカーボンモデルに使われている鋼材です。フランス産。
- 切れ味は抜群ですが、錆びることで有名なモーラナイフの炭素鋼よりも良く錆びます…(耐食性が低い)
1045、1050、1055、1060、1084、1095
- アメリカ産の炭素鋼。
- 1006から最高1095まであり、この数値が大きいほど、炭素含有量が増加します。
白紙2号
- 日立金属の炭素鋼。日本の刃物(和包丁など)によく使用されています。
- 耐摩耗性、靱性とエッジ保持に優れていますが耐食性が今一つです。
- 鋼材の種類が外観より分かりにくいため、鋼材を包装していた紙の色からこの鋼材名となりました。
白紙1号
- 日立金属の炭素鋼で、白紙2号の炭素量を増やして硬度を増した鋼材です。
- 炭素量が多い鋼材のため製造時の温度管理が難しいとされています。
青紙2号
- 日立金属の炭素鋼で、白紙2号にタングステンとクロームを添加し、焼き入れ性と耐摩耗性を向上した鋼材です。
- 鋼材の種類が外観より分かりにくいため、鋼材を包装していた紙の色からこの鋼材名となりました。
青紙1号
- 日立金属の炭素鋼で、青紙2号の炭素量を増やし硬度を増した鋼材です。
- 炭素量が多い鋼材のため製造時の温度管理が難しいとされています。
青紙スーパー
- 日立金属の炭素鋼で、青紙1号の炭素量を増やし、タングステンとクロームを添加し、硬度と耐摩耗性を向上した鋼材です。
- 炭素量が多い鋼材のため製造時の温度管理が青髪1号以上に難しいとされます。
- 日立金属の炭素鋼で、白紙2号にタングステンとクロームを添加し、焼き入れ性と耐摩耗性を向上した鋼材です。
- 鋼材の種類が外観より分かりにくいため、鋼材を包装していた紙の色からこの鋼材名となりました。
炭素鋼を利用したナイフのおすすめ
モーラナイフ ヘビーデューティー
おすすめポイント
- コスパ◎(3,000円前後で購入可能)
- 鋼材としてC100を利用していることもあり、切れ味が非常にシャープ。
いまいちポイント
- フルタングではない(頑強さでは一歩劣る)
- 炭素鋼(C100)のため、ステンレス鋼と比べると錆びやすい。
- 野菜の薄切り等には向かない(スカンジエッジという刃の付き方の問題です)
オピネル
おすすめポイント
- コスパ◎(2,000円前後で購入可能)
- 刃厚が薄く、野菜の薄切り等の調理に向く。
いまいちポイント
- バトニング等の用途には一切向かない。一つのナイフで全部こなしたい方にはおすすめできない
- すぐに錆びる。
- 刃先が鋭利すぎてお子様がいる場での利用はためらわれる。
バークリバー
おすすめポイント
- 非常に頑丈な作り(フルタング)
- 一つのナイフで全部の作業をこなしたい方には非常におすすめ
- A2鋼使用のナイフ。研ぎやすいため研ぎの勉強にもなる
いまいちポイント
- 高価
- アメリカ人向けのデザインのため、人によってはややグリップが大きく感じる
- 重い

この3つの中ならぶっちゃけバークリバーをおすすめします。
高価ですが一生物です。何よりロマンがあります笑
ステンレス鋼(Stainless Steel)
ステンレス鋼は鉄と少量の炭素に、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などが加えられて作られます。
これらの要素が炭素鋼に加えられると耐食性が増加し、加えられる量によって異なった性質のステンレス鋼が形成されます。炭素鋼ほど硬度は高くなりませんが、十分な硬度にすることができます。
主な鋼材
12C27
- モーラナイフのステンレスモデルはこの鋼材を使用しています。
- オピネルのステンレス鋼もこの鋼材を使用しています。
- ノルウェーのナイフで多く使われているスカンジナビア・サンドビック(Scandanavian Sandvik)のステンレス鋼で、440Aと同様の性質を持っています。高純度な鉄鋼で、良い焼入性と耐磨耗性があります。13C26と比較すると高い靱性と耐食性がありますが、耐摩耗性は劣ります。440Cより高いエッジ保持を持っています。
420、420HC、420J、420J2
- BUCK110もこの鋼材(420HC)を使用しています。
- 420シリーズは、低価格のステンレス鋼で、耐食性と靱性は高いのですが、耐磨耗性が低く良いエッジ保持をしません。低コストで簡単に機械化できるため、安価なナイフにしばしば使用されています。420J2は、その腐食性により、ダイビングナイフやヒレナイフに使用されます。炭素量が多い420HCは440Aに相当し、他の420ステンレス鋼と比較して比較的高いエッジ保持がありますが、耐摩耗性は劣ります。
154CM
- レザーマンOHTはこの鋼材を使用しています。
- 1970年代初頭、世界最大の民間航空機であるボーイング747がデビューした際、エンジンのタービンブレードという部品に使われた鋼材が、154CMステンレス鋼でした。
- クルーシブ・マテリアルス・コーポレーション(Crucible Materials Corporation)が製造しました。
- 154CMの名称の由来は、素材成分の Cr(クローム)15%、Mo(モリブデン)4%を含むことからと言われています。
- 耐摩耗性、靭性、耐蝕性に優れ、のちに日本製の代表的鋼種ATS-34の元となった材料として有名です。
CPM-3V
- クルーシブ・マテリアルス・コーポレーション(Crucible Materials Corporation)により作られたバナジウム工具鋼で、耐摩耗性と靱性に優れています。優れた耐食性を持っていますが、腐食が始まる場合は表面錆ではなく浸透錆の傾向があります。 耐摩耗性はSKD11とほぼ同等で、耐衝撃はSKD11の約3倍あります。
- CPMを省いて3V(スリーブイ)とも呼称される場合があります。炭素鋼のような鋭利なエッジの整形と刃持ち、ステンレス鋼の耐腐食性のいい所取りした優秀な鋼材です。純粋なステンレスと比べると錆びやすくはありますが、炭素鋼を扱うよりは神経質にならなくても錆びは発生しにくい鋼材です。
VG-10
高炭素、バナジウムステンレス鋼で、BG-42やAUS-8と同様のエッジ保持と、154CMと同様な良い耐摩耗性を持ています。ATS-34や154CMより良い耐食性を持っていて、バランスのとれた刃物鋼です。 武生(たけふ)特殊鋼材(福井県)のV金10号と同じものだと思って良いです。
AUS-6、AUS-8、AUS-10
6A、8A、10Aステンレスとも呼ばれます。 AUS-6は440Aに類似していて、420Jと競合しています。AUS-8は440Bに類似していて、ATS-55やGin-1と競合しています。AUS-10は耐食性が少し劣りますが440Cに類似していて、ATS-34や154CMと競合しています。AUSシリーズステンレスは440シリーズと異なりバナジウムを含んでいます。バナジウムは、耐磨耗性とエッジ保持を増大させ、より鋭いエッジを作ることができます。
Elmax
- クロム・バナジウム・モリブデン系の粉末冶金合金工具鋼ですが、クロム含有が多く優れた耐腐食性を示すためステンレス鋼に分類しておきます。耐摩耗性、耐食性、強度、寸法安定性いずれも高いパフォーマンスを発揮する、オーストリアのBohler-Uddenholm社によって開発されたハイスペックな鋼材です。
- バークリバーのナイフにおいては高い硬度で熱処理加工されていますので、刃を薄く整形できるため非常に鋭い切れ味を持続できるメリットがあります。
ステンレス鋼を利用したナイフのおすすめ
肥後守 VG10
おすすめポイント
- 軽量コンパクト
- 昭和生まれの方には懐かしさを感じるナイフ(わかる方にはわかる…)
いまいちポイント
- ロック機構が心許ない
- バトニングには一切向かず、調理用ナイフとしても向いているとは言いにくい
BUCK 110
おすすめポイント
- 完成されたデザイン!世界で一番コピー品が出回るナイフ
- 強度抜群(詳しくは以下のYoutube動画をご確認ください)。
いまいちポイント
- フルタングではない
- 多少重い
ファルクニーベン F1x
おすすめポイント
- サバイバルナイフとしての完成度の高さ
- 切れ味バツグン
いまいちポイント
- 高い
- やや重い
粉末冶金鋼(Powder Metallurgy Steel)
粉末冶金鋼(ふんまつやきんこう)は、インゴットから急冷し粉末に凝固させられた金属の粉末を型に入れ、粉末成形プレスで圧力をかけ固め、それを焼結炉で、金属の粉末が溶けない温度で焼き、粉を焼結させます。従来の工程で作り出された鉄鋼と比べて、結晶粒度を微細化させ、強度、エッジ保持、および研削性に優れています。本来、粉末成形で部品を造り使用する目的のため、成形後の加工が困難です。
主な鋼材
CPM-S30V
- ベンチメイドブッシュクラフター162もこの鋼材。
- クルーシブ・マテリアルス・コーポレーション(Crucible Materials Corporation、アメリカのメーカー)により作られた、高炭素、高バナジウムのマルテンサイトステンレス鋼で、食卓用金物産業のために特にクルーシブ・マテリアルス・コーポレーションのディック・バーバー(Dick Barber)によって作られました。耐食性は440Cより優れていた、摩耗性は440Cより約1.5倍優れ、靭性は3~4倍優れています。優れた焼入れ硬化性を持っています。S60VまたはS90Vより削りやすく、D-2に相当します。高炭素と高バナジウムのために、エッジ保持と耐摩耗性はBG42に匹敵します。
CPM-S60V
クルーシブ・マテリアルス・コーポレーション(Crucible Materials Corporation、アメリカのメーカー)により作られた、高炭素、高バナジウムのマルテンサイトステンレス鋼で、耐摩耗性とエッジ保持に優れていますが、削りにくく研ぎづらいです。熱処理により硬度を減らすことにより靱性を増すことができます。
粉末冶金鋼を利用したナイフのおすすめ
ベンチメイド 980SBK
おすすめポイント
- 全方位最強のサバイバルナイフ!
- 同じ鋼材を利用するバークリバーブラボー1ELMAX等と比較して安価で在庫もある
いまいちポイント
- ナイフとして見たときにはやはり高価ではある(競合よりは安いが…)
- ナイフとして使うには勿体なくなりそう(人によりますが笑)
複合鋼(Composite steel)
複合鋼は、複数の材料を圧接や鍛接により1つの部材とした鋼を言います。その代表的な物が日本刀です。 日本刀は、玉鋼・銑鉄・包丁鉄の3種類を積み上げ加熱し小槌で叩いて鍛接します。そのときの配合は、含有炭素量が異なる心金(しんがね)、棟金(むねがね)、刃金(はのかね)、側金(がわがね)の4種類に作り分けされ、厚さ2cm、幅4cm、長さ9cm程度の鋼にします。 四方詰鍛えの造込みでは、側金、芯金、側金の順で重ね、鍛接します。厚さ1.5cm、幅3cm、長さ50~60cm程度に打ち伸ばされ、刀の握り部分になる、茎(なかご)が鍛接され刀の形に打ち延ばされます。
主な鋼材
ダマスカス鋼(Damascus steel)
インドで作られたロストテクノロジー。現在は正確な作り方は不明。そのため、ダマスカス鋼の外観と性能を模倣した鋼を説明するために使用されています。 多くの場合、異なる種類の鋼材を折り返し鍛造したときに現れる縞模様と似たを表面を浮かび上がらせた鋼材が、ダマスカス鋼と呼ばれています。